納品前作業

ピアノ・サロン「オ・ル・ゴール」へ「ベーゼンドルファー・インペリアル 290 セナトール」を設置するに当たって行われたもので、主に「弦の張り替え」とそれに伴う付帯的な作業です。

2019-11-21

まず、弦の張り替え作業です。

切断された古い弦と、これから外されるチューニングピンが見えます。

2019-11-25

弦とピンを全て外します。

ヒッチピン・パンチング・クロスも取り除きますと、インペリアルは高音のバックストリング部は必ず弦枕フェルトの上に真鍮バーが置かれています。

2019-11-30

まず、駒ピンの磨きから。 左半分が磨き終わった方です。

弦枕の真鍮バーも磨きます。

そしてフレームと響板を掃除。

ベーゼンドルファー専用の 弦枕フェルト と ヒッチピンパンチングクロス とアグラフ!

まずはアグラフを交換します。元々は右のように「スチールピン」入りのアグラフを使用していますが、断線しにくくするためピンなしのアグラフを使用します。

 

そしてベーゼンドルファーは2本弦の所のアグラフは2種類あります。 右は「通常」のもの、左が「ワイド」タイプ!  よーく見ると左は穴が離れています。

弦が太い箇所だと振動した時、隣に当たってしまうため、インペリアルは2つだけこれを使用します。

紐を使ってアグラフの角度調整。 これだけ長いと、通常の紐の長さでは全然足りません。

ひとまず低音側は全て終わりました。

2019-12-01

次の作業は張弦の下準備から…

弦枕フェルト(エンジ色のフェルト)を張り付けます。 現行のオリジナルのフェルトです。

そして中音のアグラフ交換。念のため、弦を張った状態を仮定し、交換したアグラフと元のアグラフの弦の高さを確認。

これで中音のアグラフ交換も完了! フォアストリング側の弦枕フェルトも接着。

ヒッチピンパンチングクロスも装着。

駒ピンを磨いて・・・

・・・フレームや外装にマスキングをし・・・

・・・あとは弦を作って張るだけ! まずは一番太い弦から玉を作り、

1本1本取り付けます。ベーゼンドルファー特有の非折り返し弦にて1本づつ独立しています。

因みにこちらがベース弦。インペリアルは290㎝ですから普通の家の天井高よりも高い事になります。

一番左が先程張った芯線の一番太い弦で番手は#23.5

真ん中がC3等の芯線の一番太い弦#18

右は最高音に使う一番細い弦#13番手#17.5が太さ1mm、番手が0.5ずつ増えると0.025mmずつ太くなり、番手が減ると細くなります。

要は#23.5は1.3mm、#13は0.775mm…これだけの差があると、見た目でもすぐに分かります。

太さ、張力、長さ、弦密度の4つが音程を決定する要素で、そこから固有振動数を割り出す数式もある位です。

ベーゼンドルファーは張力がかなり強めに設計されているため、やはりこれだけの太さがないと耐えれないようです。

 

2009-12-09

2019-12-07

次中音の「ヒッチピン」「駒打ち」「玉詰め」をし、ベース弦もここまでダルダルに張っています。ベーゼンドルファーは張力が強いため全体を張ってからでないと張力をかけるのは危険です。

ベース弦を全て張り替え完了!

後ろから見ると何気にカッコ良いですよね!

次に中音のアグラフの高さ・角度調整。

弦枕フェルトとヒッチピン・パンチングクロスを装着。

2019-12-09

カポダストロバーの研ぎ! ユニットごと取り外し式!

もともとはこのような古びた感じ・・・

・・・弦跡を消して、鏡のように磨き上げます

ユニットを装着。 両端以外のネジは磨いてから装着します。

ここが脱着出来るのはベーゼンドルファーの特徴で、フレームごとひっくり返さなくても磨けるのは便利です。

そして次中音までは張り終わり。

2019-12-22

あと次高音の半分と高音で完了!

2019-12-23

 張弦の続き

1本ずつピンに巻いて張ることも、玉作りの形状も、全て意味があります。

時間はかかっても、全てそうしないと、きちんとした音を奏でてくれないピアノです。

そしてようやく張るところまでは完了。

あとは弦割り・コイルの上げ下げ等々を行って張弦は完了です!

2019-12-26

張弦の仕上げにて、全体的にピンの高さを低くする。

ベーゼンドルファーは張力が非常に強いため、ここからの仕上げの前の張力アップをかなり慎重に行わないといけません!

2019-12-27

張弦仕上げ!

まずは全体の張力を少しずつ慎重に上げていき…ベーゼンドルファーは特に張力が強いため、一気に全体を上げてしまうとフレームにかなりの負担がかかりますので注意が必要です。  

フレームが折れることもあるので…

ある程度張力を掛けたら次高音・高音の弦割を直し、そのあとバラバラの張力を一瞬緩めて引き上げ・・・

 

・・・ピンホールが半分近く出るまで打ち下ろします。

そのあとチューニングピンの高さを揃え、ヒッチピン・駒打ちをしたら玉詰め作業です。 詰める前は未だ空間が空いているような・・・

・・・詰めた後はコイルが密着し、穴が小さくなってヒッチピンを締め付けました。 これをやらないといつまでも音の狂いが大きなピアノになってしまいます。

ベーゼンドルファーの総1本張りとこの特殊な玉の作り方は、弦を捻らず張ることで透明感のある音を奏でる目的の他に、「音を狂いにくくする」という目的もあります。しっかりこのような作業も行わないと、せっかくのこの仕組みの意味がなくなってしまいます。

そしてまた全体の張力を上げて…張弦完成となります。

こうやって見ると、本当に美しいですね。

さて、後はアクション関係の調整にて完了となります。

2019-12-29

外装修復も鍵盤蓋を除き完成し、久々に大屋根が付きました!

そしてダンパーも取り付け

一応チッピング(弦を弾いて音を出す方法)にて張力をある程度上げてましたがまだまだ低いため…何度も下律をして全体的に正常な張力にしました。   かなり慎重に…

何度やってもベーゼンドルファーはベース弦が切れそうで怖い…本来のピアノより遥かに引っ張りますからね~

 

張力を正常に上げたら弦 水平調整弦が3本高さが合っているか見る作業です。

2020-01-05

弾き込み後、もう一度調律し、ようやく鍵盤蓋も付きました。  

これでようやく完成ですね!

弾き込みと調律・整音をあと3回ぐらい繰り返す予定です。

以上の作業により、一層魅力的な音色となりました。